4つのホットジュピターが地上からの観測で見つかる

公転周期-質量ダイアグラム。

これまでに200個近い系外惑星を見つけている「WASP」が新たな成果を報告しました。

スイス・ジュネーブ天文台に所属する L. D. Nielsen 氏らの研究グループがarXivに投稿した研究(arXiv:1904.10388)は、WASPプロジェクトによる4つの惑星「WASP-169b」「WASP-171b」「WASP-175b」「WASP-182b」の発見を伝えています。

WASPはトランジット法で系外惑星を探すために南北半球に1か所ずつ専用の施設を備えています。惑星はいずれもWASP-South(南アフリカ天文台)のデータから「惑星候補」として見つかった後、フォローアップ観測で確認されました。

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4つの惑星はそれぞれが別々の恒星の周りを公転しています。これらはWASPが発見してきた多くの惑星と同じく短周期の木星型惑星(ホットジュピター)ですが、いくらかの個性があります。

惑星系

WASP-169b

惑星「WASP-169b」は主恒星の周りを5.61日周期で公転するホットジュピターで、木星の6割の質量と1.3倍のサイズ(半径)があります。平均密度は約0.3g/cm3で、太陽系で最も密度が低い土星と比べて半分以下です。このような低い密度はホットジュピターでよく見られる特徴です。

主恒星「WASP-169」は太陽の1.3倍の質量と2.0倍の半径を持つ年老いた星「準巨星」です。

WASP-171b

惑星「WASP-171b」は主恒星の周りを3.82日周期で公転するホットジュピターで、ほぼ木星並みの質量・半径があります。この惑星はホットジュピターとしては高めの平均密度を持ちます。

主恒星「WASP-171」は太陽の1.2倍の質量と1.6倍の半径です。この星は温度の割に半径が大きいため準巨星かもしれません。

またWASP-171系には、観測された3.6年の間に、視線速度に年平均マイナス80m/sの長期トレンドが見られました。これはWASP-171bのほかに長周期の惑星が存在する可能性を示しています。ただし原因を突き止めるにはさらなる観測が必要です。

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WASP-175b

惑星「WASP-175b」は主恒星の周りを3.07日周期で公転するホットジュピターで、木星並みの質量と木星の1.2倍のサイズ(半径)があります。平均密度は約0.7g/cm3で、WASP-169bと同様に密度の低い「膨張した」ホットジュピターです。

主恒星の「WASP-175」は太陽の1.2倍の質量と1.2倍の半径です。WASP-175の近くには4分の1の明るさがある別の恒星が存在し、これはWASP-175の伴星かもしれません。仮に伴星だとするとWASP-175からは4600天文単位(=地球と太陽の距離の4600倍)離れています。

WASP-182b

惑星「WASP-182b」は主恒星の周りを3.38日周期で公転するホットジュピターで、木星の15%の質量と85%のサイズ(半径)です。平均密度は約0.3g/cm3あります。主恒星の「WASP-182」は太陽の1.1倍の質量と1.3倍の半径です。

質量が土星の約半分に過ぎないWASP-182bは「サブサターン」(質量が土星未満の木星型惑星)に分類されます。これまでの研究で、軌道の小さい(周期数日以下)サブサターンはほとんど存在しないことが分かっています。軌道が小さく恒星から強い放射を浴び、なおかつ重力の弱いサブサターンでは、大気の流出が特に起きやすく、より小さな惑星に変化することがその一因と考えられています。

公転周期-質量ダイアグラム。
公転周期-質量ダイアグラム。白い丸がWASP-169b, 黄色い四角がWASP-171b, 青い三角がWASP-175b, 赤いダイヤがWASP-182bの位置を表す。青色の範囲では中間質量の惑星が極端に少ない。

WASP-182bの質量と公転周期の組み合わせはこの「サブサターン砂漠」の近くにあり、仮にもう少し軌道が小さければ今の形では存在していなかったかもしれません。


今回発見された4つの惑星のうち、「WASP-169b」「WASP-175b」「WASP-182b」は主恒星が(太陽系から見て)比較的明るいため、「透過光分光法」などを通じた惑星大気の観測に適しています。特に「サブサターン砂漠」の近くにあるWASP-182bは惑星大気流出に部分的に影響されている可能性があり、興味深いターゲットと言えます。

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Nielsen氏らの研究は2019年4月23日にarXivに投稿され、24日に公開されました。

フォローアップに用いられた設備

  • 「TRAPPIST-North」(0.6m望遠鏡、モロッコ・ウカイムデン天文台)
  • 「TRAPPIST-South」(0.6m望遠鏡、チリ・ラ・シヤ天文台)
  • 「SPECULOOS-South」(1m望遠鏡群、チリ・パラナル天文台)
  • 「オイラー1.2m望遠鏡・EulerCam(撮像装置)・CORALIE(分光器)」(チリ・ラ・シヤ天文台)
  • 「ESO 3.6m望遠鏡・HARPS(分光器)」(チリ・ラ・シヤ天文台)

参考文献

  • Nielsen, L. D. et al., 2019, “WASP-169, WASP-171, WASP-175 and WASP-182: One bloated sub-Saturn and three hot Jupiters discovered by WASP-South”, arXiv:1904.10388v1.

更新履歴

  • 2019/04/28 – 表を追加
  • 2019/04/28 – 表中のWASP-182bの半径を訂正(0.950→0.850)・画像を追加

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