WASP-4bの周期はやはり変化していた

ホットジュピター「WASP-4b」のトランジットの発生間隔が変化していることが確かめられました。ホットジュピターでこのような変化が見つかるのは稀です。

「WASP-4b」は2008年に発見されたホットジュピター(高温の木星型惑星)です。この惑星は木星の1.25倍の質量と1.36倍の半径を持ち、主恒星の手前を横切ることで光を遮る「トランジット」を1.338日周期で起こしています。

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WASP-4bは2018年に系外惑星観測衛星「TESS」によって再観測されました。その時のトランジットの発生時刻は、それまでの研究から予想される時刻より約80秒早いものでした。これはWASP-4bにトランジット時刻変動(TTV)が起きている可能性を示しています。

TESSによるWASP-4bの観測の詳細:81秒早く現れたホットジュピター


英キール大学に所属する John Southworth 氏らの国際研究グループがarXivに投稿した研究(arXiv:1907.08269)は、WASP-4bのTTVを詳しく調べたものです。研究グループは、既に公開されている観測データに加えて、2008年から2019年にかけて3つの望遠鏡で集められた独自のデータを採り入れて分析を行いました。

  • チリ・ラシヤ天文台デンマーク1.54m望遠鏡
  • チリ・ラシヤ天文台NTT望遠鏡(口径3.58m)
  • 南アフリカ天文台1.0m望遠鏡

結果

分析の結果、トランジット間隔が緩やかに変動しているとするモデルの方が、等間隔とするモデルと比較して、観測されたトランジットのタイミングを明らかに上手く説明できることが分かりました。トランジットの発生時刻は10年の間に数十秒のずれが生じており、これはトランジット周期が一周期当たり1.68±0.20マイクロ秒(1マイクロ秒=100万分の1秒)縮まり続けていることに相当します。

現時点のデータに基づくと、周期の変化は単調で直線的な減少傾向として表れています。これが永続的なものなのか、あるいは数十年以上の周期を持つ増減のパターンの下り坂の部分を見ているのかは明らかではありません。

TTVは比較的小型の惑星(スーパーアースやサブネプチューン)で多く見つかっていますが、ホットジュピターで確認されるのは稀です。研究グループによるとWASP-4bはTTVが明確に検出されたホットジュピターとしては3例目ということです。

原因

研究チームは最も可能性が高い説明として、WASP-4bが楕円軌道を持ち、その長軸の方向が時間と共に変化する「近点移動」が起きていることで見かけ上トランジット周期が変化しているという説を挙げています。この場合、変動のパターンは波型が予想され、現在はその下り坂にあることになります。

近点移動
楕円軌道の近点の方角が徐々に変化する現象を近点移動という。

別の可能性として「light-time効果」と呼ばれる現象(※)があります。WASP-4系に未発見の伴星(褐色矮星か恒星)があり、その影響で太陽系に対する相対速度が変化していれば、この効果はTTVの原因となります。ただし、観測されたTTVをもたらすような質量・軌道の伴星が存在することは、不可能ではないものの、可能性としては高くないと見られます。

他のシナリオとして、(1) 恒星表面の黒点がトランジット発生時刻を計算する上で影響した (2) 恒星の磁気的な状態の変化が影響した(アップルゲート効果) (3) 潮汐力によって軌道が縮小した というものが考慮されましたが、いずれも観測されたTTVを上手く説明できませんでした。

研究グループは、WASP-4bのTTVの原因を特定するためには、今後もトランジット発生時刻の観測を続けることが必要としています。また仮に近点移動が原因である場合、WASP-4bが主星の奥に隠れる掩蔽の発生時刻を精密に観測することが有用としています。


Southworth氏らの研究は2019年7月18日にarXivに投稿され、22日に公開されました。


補足

※(light-time効果) WASP-4系から太陽系までの距離が変われば、光が太陽系に届くまでに要する時間が変わるため、観測されるトランジットの発生時刻は変化します。WASP-4系が一定の速度で太陽系に対して運動していれば、この効果による間隔の変化は一定になります。すなわち観測される間隔は、本来の間隔とは異なるものの、値自体は一定に保たれます。

一方で太陽系に対する相対速度が変化していれば、この効果の影響が変動し、実際のトランジットの発生間隔が等間隔でも、観測される間隔は不等間隔になります。

参考文献

  • Southworth, J. et al., 2019, “Transit timing variations in theWASP-4 planetary system”, arXiv:1907.08269v1.

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カテゴリ:トランジット法

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