中型望遠鏡で観測されたホットジュピターの大気

3つの中型望遠鏡(口径1.23〜2.2m)を用いた観測で、ホットジュピター「WASP-74b」の大気に酸化チタンや酸化バナジウムが存在しているとみられることが分かりました。

トランジットの多色観測

イタリアのローマ・トル・ベルガータ大学に所属する L. Mancini 氏らの研究グループは、系外惑星WASP-74bのトランジットを観測した結果をarXivに投稿しました。

トランジットとは、惑星が恒星の手前を横切ることで恒星の光を遮り、一時的な恒星の減光をもたらす現象です。

トランジットの減光は、惑星本体と惑星大気の双方によって引き起こされます。光を通さない惑星本体は常に同じ量の光を遮る一方、半透明な惑星大気は光の波長によって透過率が異なるかもしれません。

そのためトランジットを複数の波長フィルターを通して観測し、減光の大きさを比較すれば、大気について知ることができます。

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中型望遠鏡による観測

研究では、2015年から2017年にかけて11回分のトランジットについて集められた観測データを用いました。

観測には、チリのラ・シヤ天文台にあるデンマーク1.54m望遠鏡とMPG 2.2m望遠鏡、スペインのカラルアルト天文台1.23m望遠鏡が使われました。MPG 2.2m望遠鏡では多波長同時観測装置「GROND」が用いられました。

また研究グループは2018年にTsiaras氏らが公表したハッブル宇宙望遠鏡WFC3カメラの近赤外線データも用いました。

分析

研究グループは、観測されたトランジットの光度変化から惑星のサイズ(恒星との相対的な半径)を計算しました。

系外惑星WASP-74bを異なる波長を通して見た際の恒星に対する相対半径。Mancini et al. 2019の表5に基づきます。

惑星の半径は、波長によって5%程度の違いがありました。特に、波長0.7マイクロメートル前後の近赤外線領域で大きくなっていました。これは惑星大気がこの波長の光(赤外線)を通しにくいことを意味します。

この結果を最もうまく説明できる大気モデルは、大気に不透明な雲が存在せず、酸化チタン (TiO) や酸化バナジウム (VO) が存在しているというものでした。

※TiOやVOは系外惑星の大気の組成としてしばしば扱われます。これは少量でも可視光や近赤外線を非常に強く吸収する特性があり、観測にかかりやすいからです。そのため大気にチタンやバナジウムが特別に多く存在しているわけではありません。

ただし雲が存在するモデルの一部でも観測結果に一致するものがあり、TiO・VOモデルが正しいとは断定できませんでした。

TiO・VOと雲の双方が存在しないというモデルや、厚い雲が存在するというモデルは、可能性が低いことが分かりました。


系外惑星の大気を観測する方法として、分光器を用いてトランジットを分光観測するものがあります。

これに対して、今回の研究で使われた技法は大気の詳細な波長ごとの特性を調べることには向かない一方、より小型の望遠鏡でも実行可能で、暗い星にも適用できる利点があります。

今後「TESS」などの観測で多くのホットジュピターが発見されると考えられており、幅広い系外惑星を簡単に調べる方法として期待される技法です。

Mancini氏らの研究は2019年3月6日にarXivに投稿され、8日に公開されました。

参考文献

Mancini, L. et al., 2019, “Physical properties and transmission spectrum of the WASP-74 planetary system from multi-band photometry”, arXiv:1903.02800v1.

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