海洋惑星の居住可能性・二酸化炭素が脅威となる?

「海洋惑星」には水の他に二酸化炭素が含まれます。新しい研究ではこれまでよく分かっていなかった海洋に溶け込めない二酸化炭素がの振る舞いが調べられました。

海洋惑星の定義の一例

地球に含まれる水(H2O)は惑星質量の0.1%にすぎません。一方で地球以外では、集積の過程で大量のH2Oを揮発性物質の形で取り込んだ「海洋惑星」が存在すると考えられています。

今回米シカゴ大に所属する Nadejda Marounina 氏と Leslie A. Rogers 氏がarXivに投稿した研究(arXiv:1904.10458)は、そのような海洋惑星を扱っています。

海洋惑星の定義と概要

「海洋惑星」に統一された定義はありません。今回の研究では惑星の内部に「高圧氷」が生じ得る惑星を海洋惑星と称しています。

※定義だけでなく言葉としても「water world」「ocean planet」「ocean world」「水惑星」「海洋惑星」などの異なる表記が混在しています。

海洋惑星の定義の一例

揮発性物質を含んだ惑星では海洋ができます。海洋が浅い時(約100km以下)、その底は岩石です。

H2Oが増えると海洋は深くなり、深層にかかる水圧も大きくなります。水圧が十分に大きい環境では、液体H2Oは「高圧氷」に変化します。高圧氷は水より比重が大きく高温でも安定しているため、海洋の下・岩石の上に独立した層を作ります。

※地球はこの定義では海洋惑星ではありません。

高圧氷が生じるために惑星は質量の約1%以上に相当する揮発性物質を取り込むことが必要です。

海洋惑星と二酸化炭素

ところで惑星が取り込む揮発性物質はH2Oだけではありません。特に二酸化炭素(CO2)はH2Oに次ぐ割合(分子数で3%~30%程度)を占めると見られています。

研究チームはまず、岩石層の上に高圧氷層が存在し、その上に海洋が存在するという古典的な海洋惑星のモデルを想定しました。このモデルでは海洋に溶け込めない「過剰な」CO2が生じ得ますが、従来これについては深く考えられてきませんでした。

有り余る二酸化炭素

研究チームはまず過剰なCO2が本当に生じるか調べました。海洋が吸収できるCO2は温度によって異なりますが、詳しく調べたところ理想的な条件でもその量は多くないことが分かりました。

過剰なCO2が発生するかどうかを決める重要な要素は、惑星に含まれる揮発性物質の割合です。これが増えるほど、海洋が全てのCO2を受け入れるのは難しくなります。

これは次の理由によります。揮発性物質(すなわちH2OやCO2)が増えると、高圧氷の層は厚くなりますが、海洋はほとんど深くなりません。ここでは高圧氷はCO2を取り込めないことが重要です。この状況でCO2が増えれば、取り込める限界を簡単に超えます。

※海洋惑星では、海洋の深さは高圧氷への変化が始まる深さで決まります。これは地球のような岩石質の海洋底を持つ惑星とは大きく異なる点です。

研究チームの計算によると、海洋が全てのCO2を取り込むためには、惑星質量に占める揮発性物質の割合が11%を下回ることが必要です。この数字は楽観的な仮定に基づくもので、実際にはさらに厳しい条件が見込まれます。

二酸化炭素の行方

条件の厳しさは、多くの海洋惑星ではCO2が海洋に溶けきらないことを示しています。過剰なCO2の行方について調べることは今回の研究が最大の目的とするところです。

まず考えられるのが大気中への蓄積です。大気中の大量のCO2は強い温室効果を生じさせ、惑星を生命の住めない星にします。

一方で、CO2が何らかの形で大気から隔離されれば、状況は変わります。

注目されるのが「固体CO2」(ドライアイス)です。固体CO2は液体H2Oや高圧氷より大きな比重を持ち、高圧下では高温でも安定しています。そのため海洋中で生じた固体CO2は海底に堆積し、さらに高圧氷層の下に沈み込んで独立した層を作ることが可能です。

「炭酸一水和物」と呼ばれる物質も候補の1つです。高圧環境でのみ安定して存在できるこの物質は、固体CO2と同様に高い密度を持ち、固体CO2と共にCO2に富んだ地下の層を作るかもしれません。


今回の研究をまとめると、(1) 大半のケースで海洋惑星の海洋はCO2を吸収しきれず、(2) 吸収されなかったCO2が大気に留まれば惑星は生命が住めなくなるが (3) CO2が「固体CO2」「炭酸一水和物」などの形で大気から分離されれば2の状況を回避できる ということになります。

今回の研究は一定温度の惑星を前提としていますが、実際の惑星は高温状態に生まれて次第に冷えていきます。過剰なCO2が本当に大気から分離されるか検討するには、惑星の冷却を採り入れたより詳しい研究が必要です。

またH2OやCO2の超高圧環境における振る舞いは不確かです。研究チームは、海洋惑星の居住可能性を解き明かすためにはこれらの物性を研究することも重要としています。

Marounina氏らの研究は2019年4月23日にarXivに投稿され、25日に公開されました。

参考文献

  • Marounina, N. & Rogers, L. A., 2019, “Internal Structure and CO2 Reservoirs of Habitable Water-world”, arXiv:1904.10458v1.

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