雪だるまを作ったのは誰か

探査機ニューホライズンズが観測した小天体「ウルティマトゥーレ(2014 MU69)」は、2つの球体が合体したような「雪だるま形」をしています。接合部には「ネックレス」のような明るい地域も見つかっています。

この度、これらの特徴を説明する一連のメカニズムが提唱されました。

公表された研究は、米ミズーリ州のセントルイス・ワシントン大学マクドネル宇宙科学センターに所属する J. I. Katz 氏がarXivに投稿したものです。

ウルティマトゥーレは、海王星の外側にある小天体群「カイパーベルト」に属する天体です。冥王星探査を終えたNASAの探査機「ニューホライズンズ」が2019年1月1日に接近観測を行ったことで、探査機が訪れた最遠の天体となりました。

ウルティマトゥーレの表面は、最も暖かい所でも-220℃程度で、主にアンモニアや水の氷で構成されていると見られます。

この小天体の最大の特徴は、「雪だるま形」の外見です。この形の奇妙な点は2つあります。1つは、2つの塊が繋がった全体の形状で、もう1つはそれぞれの塊が球形に近いことです。

探査機が撮影したウルティマトゥーレ
(出典:NASAほか・詳細

ガスに包まれて生まれた

Katz氏は、この形状はウルティマトゥーレが希薄なガスの中で誕生した名残だと考えています。

この考え自体は目新しいものではありません。生まれたばかりの太陽は、ガスやダストからなる「原始惑星系円盤」に囲まれており、その円盤の中で惑星や小天体が生まれることは広く知られています。

ウルティマトゥーレは、2つの分離した塊として生まれた後、ガスの抵抗で軌道が縮み、最終的に合体したと考えれば、全体的な形については自然に説明がつきます。

しかし、「それぞれの塊が球に近いこと」を説明するには、より踏み込んだ考察が必要です。

そこでKatz氏は、アンモニアの氷が蒸発することで、合体に先立って塊が球形化していたという説を唱えています。

小天体から蒸発した物体の大半は、宇宙空間へ飛び去りますが、周囲にガスがあれば、蒸発した物質が再び地表に堆積する循環が起きます。

ウルティマトゥーレが2つの塊として形成された時点では、それぞれの塊はまだ不規則な形をしていたと考えられます。塊の盛り上がった部分は太陽の熱で温められて蒸発しやすいのに対し、凹んだ部分は温度が低く、幾何学的にも物質が堆積しやすくなっています。そのため、この状況下では、天体の凹凸は時間と共に小さくなり、球形に近づきます。

ただ、この説明には2つの難点があります。

1つは、現在のウルティマトゥーレの温度では球形化は起きないことです。もう1つは、仮にそのような球形化が起きるのなら、塊が合体した後も球形化が続き「雪だるま形」を維持できないはずだということです。

鍵は太陽の明るさ

そこでKatz氏が着目したのは、誕生直後の太陽は今よりも明るかったということです。

太陽が明るい時代には、2つの塊は球形化が進むに十分な温度(80から90ケルビン、約-190℃)まで温められていたと考えられています。それと並行して、ガスの抵抗により2つの塊の距離は縮んでいきます。

太陽の光度が落ち着くと、温度が下がって球形化は進まなくなりますが、この時点で、既にそれぞれの塊は十分丸くなっていたと考えられます。一方で、ガスはまだ残っているため、軌道は縮小を続け、やがて2つの塊は合体します。

ガスが完全に散逸すると、現在の「雪だるま形」が完成します。

ネックレスの正体は?

Katz氏は2つの塊の接合部に見られる「ネックレス」についても考察しています。

現在のウルティマトゥーレの温度ではアンモニアの蒸発は非効率ですが、全く起きないわけではありません。蒸発したアンモニアの大半は宇宙空間へ逃げていき、ごく一部が地表に戻ってきます。

ここで現在のウルティマ・トゥーレを見ると、二つの塊の接触部付近は日当たりの悪い窪地−低温かつ蒸発する物質を受け止めやすい形状になっています。そのため、蒸発したアンモニアが高純度のアンモニアの氷として少しずつ集積し、明るい「ネックレス」の地形を作っているとしています。

Katz氏は、仮にこの推論が正しければ、同じような特徴のカイパーベルト天体が他にも存在するだろうと考えています。これらの天体が、背景の恒星を覆い隠す現象(掩蔽)を観測すれば、形状を調べることが可能です。

また、低温下では氷の放射率が詳しく分かっておらず、研究に当たってKatz氏はこれらについて仮定に基づく不確かな扱いをせざるを得ないことに気が付きました。そのため氏は、低温のカイパーベルト天体の研究を進めるには、実験室実験で氷の性質を調べることも必要だとしています。

Katz氏の研究は2019年2月4日にarXivに投稿され、2月5日に公開されました。

参考文献

Katz, J. I., 2019, “Ultima Thule (486958; 2014 MU69): Necklace, Composition, Rotation, Formation”, arXiv:1902.00997v1.

「雪だるまを作ったのは誰か」への2件のフィードバック

  1. これは自分で転載しました。
    よろしくお願いします。

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