160日に1日だけ光度が80%低下した星

K2ミッションで観測された恒星EPIC 204376071に奇妙な変光が見つかりました。

EPIC 204376071は、ケプラー宇宙望遠鏡の延長ミッション「K2」でターゲットとなった膨大な数の星に含まれます。

K2の観測は「キャンペーン」と呼ばれる約80日の期間に区切られています。EPIC 204376071はこのうち「キャンペーン2 (C2)」「キャンペーン15 (C15)」の合計160日間、ケプラーの視野に捉えられました。

C15の期間中に、EPIC 204376071は突如として大きな減光を起こしました。この星は平常光度から急に暗くなった後、それより遅いペースで元の明るさに戻り、光度曲線に非対称な深いV字型を残しました。減光の割合は最大80%に達し、減光していた期間は約1日でした。

C2では同様の減光は記録されていないため、この現象は約80日以上の間隔で起きているか、あるいは一過性のものと考えられています。

低質量の若い星

S. Rappaport氏らの研究グループがarXivに投稿した研究は、この天体の変光を扱っています。

まず研究グループは、地上の望遠鏡を使って新たに観測したスペクトルや、ガイア衛星などの既存のデータから、この星の性質を推定しました。

EPIC 204376071は低質量の若い星(前主系列星)で、太陽系からは135±4パーセク(約440光年)の距離にあります。「上さそり座アソシエーション」と呼ばれる星の集団に属していることから、年齢は約1100万年と見られます。

この星の半径は質量の割に大きなものです。高速(1.6日周期)で自転し、しばしばフレアによる増光を起こします。これらは若い星にみられる典型的な特徴です。

3つの可能性

研究チームが減光の原因として考えたのは、「円盤をもつ伴星」と「ダストの雲」「ディッパー」の3つです。

円盤による掩蔽
円盤を従えた伴星が主星を掩蔽する様子の想像図(詳細

「円盤をもつ伴星」は、EPIC 204376071の周囲を伴星(惑星や褐色矮星)が公転しており、その伴星が土星の環のようなリング状のダストを従えていると考えます。検証の結果このモデルは減光のパターンをうまく説明できました。

円盤の半径は恒星半径の約4.2倍で、観測者(=われわれ太陽系)に対して傾いているため楕円形に見えます。

このモデルから計算される伴星の公転速度は秒速38kmです。この値を円軌道に当てはめると伴星の公転周期は80日より小さくなります。これはK2の1回目の観測で減光が見られなかったという事実に反します。速い公転速度と長い公転周期を両立するには、伴星は潰れた楕円軌道を持たなければなりません。このシナリオでは伴星質量は木星の3倍以上とみられます。

「ダストの雲」は、半透明なダストの雲が恒星の手前を横切ったというモデルです。研究チームは単純化のため恒星直径より幅の広い半透明なシート状のダストを考えました。そして単純な数式で表される分布を用いて減光を概ね再現できることを示しました。

このモデルは、円盤をもつ伴星のモデルと比べて再現性が劣っていますが、これは単純な分布を用いたのが原因かもしれません。

このモデルの課題は、ダストの雲がどこから発生したかということです。研究では、恒星の周りを公転している天体から放出されることが想定されていますが、詳しいメカニズムは語られていません。

3つ目の可能性は、この星は「ディッパー」の特殊なケースというものです。ディッパーとは恒星の周りのダストが星へ向けて流れ込むことで減光する若い変光星のことです。

奇妙な点として、EPIC 204376071は通常のディッパーと比べて減光が大きく、減光の大きいディッパーと比べると減光期間が短いことが挙げられます。また、主たる減光以外に小規模な減光が見られないことや、ダストの存在を示す赤外線超過があまり強くないことも、他のディッパーとの違いです。

EPIC 204376071を研究する上で障壁となるのがその暗さです。この星のV等級(可視光での等級)は16.3で、観測には大型の望遠鏡が必要です。さらに周期が分からない以上は減光を狙い撃ちする訳にもいきません。

近年はケプラー宇宙望遠鏡の観測などで、この種のダストに関連するとみられる変光星の発見が相次いでいます。EPIC 204376071に似た、しかし観測がより容易な変光星を見つけることができれば、EPIC 204376071の謎を解明することにも繋がるかもしれません。

Rappaport氏らの研究は2019年2月21日にarXivに投稿され、22日に公開されました。

参考文献

Rappaport, S. et al., 2018, “Deep Long Asymmetric Occultation in EPIC 204376071”, arXiv.1902.08152v1.

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